【2023年7月最新版】農業ドローンの法規制を分かりやすく解説
2022年12月05日、ドローンに関する国内で初めての公的な資格、無人航空機操縦者技能証明を含む新たな制度がスタートしました。
この制度は、「空の産業革命」を掲げ、ドローンを目視せずに第三者の上空を飛行させる様な飛行方法(物流分野でのドローンの活用など)
を行う際に必要となる資格です。従って、ドローンで農薬散布を行う際には、この資格は必要ないため、従来と変わりはありません。
本コラムでは、その従来の法規制がどのようなものであるか、また農業ドローンを使用するにはどのような手続きが必要かを解説いたします。
国家資格のよくある誤解
まず、誤解が多い今回の操縦ライセンス制度(無人航空機操縦者に関する技能証明制度)について、簡潔にご説明いたします。この新制度では、「一等無人航空機操縦士」と「二等無人航空機操縦士」という国内で初のドローンに関する
公的な資格が新設されました。
① 一等無人航空機操縦士
「有人地帯で目視外航行」いわゆるレベル4飛行を行う場合、資格保有が要件の一つとなる。
② 二等無人航空機操縦士
これまでも許可・承認を受けることで認められていたいわゆるレベル3以下の飛行を行う場合で、
資格保有と一定の条件(機体認証制度など)を満たす場合に飛行ごとの許可承認が原則不要になる。
▼この内容をまとめた国土交通省の資料
なお、農薬散布は、「危険物輸送」「物件投下」という飛行毎の許可・申請が必要な飛行方法を行うため、
これらの資格を所持していても、必要な手続きに変わりはありません。
そのため、ドローンの使用目的が農薬散布だけという方にとっては、今回の資格制度はあまり関係がないということになります。
免許なし?民間ライセンス?
では、「農業ドローンは、免許なしで操縦できるの?」という質問が聞こえてきそうですが、正解は「半分、YES」です。
「免許」とは、官公庁が一般には禁止されている行為を特定の人または場合にその禁止を解除することを意味します。
農業ドローンの操縦は一般的に禁止されていないため、免許は必要ありません。
ただし、農業ドローンを操縦して農薬散布を行う行為の中には、航空法の規制対象となる行為が存在するため、
農業ドローンを使用して農薬散布を行うためには、事前に国土交通大臣への申請が必要となります。
申請を行うためには、一定以上のドローンの操縦技能を証明する必要があり、
自力でその申請を完了させることも可能ではありますが、ドローンスクールなどの講習を修了し、
その証明書を提示する形であれば、申請項目の一部を省略することができます。
また、受講を完了することで、この申請全体を代行してくれるスクールも存在します。
▼オンライン申請プラットフォーム「DIPS」
農業ドローンに関わる法律
それでは、農業ドローンで農薬散布を行う際に関わってくる法規制について解説いたします。
まずドローンに関わる法律として、航空法による規制があります。ラジコンヘリやドローンといった無人航空機による農薬散布は、
「危険物輸送」,「物件投下」と呼ばれる国土交通大臣の承認が必要となる飛行の方法です。
そのため、操縦者がその飛行方法を行うのに適切な技量を身に着けていることや、適切な機体であることを事前に申請する必要があります。
申請は、オンライン上で行えます。(郵送も可)
先に述べた2つの飛行の方法以外にも「DID地区(人口密集地域)での飛行」,「障害物との距離30m未満での飛行」,「夜間飛行」という
同じく航空法の規制を受ける飛行方法が存在します。散布を行う地域が人口密集地域である場合や障害物との距離を30m以上離すこと
が不可能な圃場、散布を日の出前から行う可能性がある場合には、事前に申請に申請が必要となります。自身ですべての申請を行うか、
代行してくれるスクールを選択するか、もしくは、行政書士さんに依頼をするかは、農業ドローン選びにおいて重要な観点かもしれません。
農薬散布に関わる法律
次に、農薬散布に関わる法律として、農薬取締法の解説をいたします。農薬取締法には、
「農薬を使用する者は、農作物や人畜、周辺環境等に被害を及ぼさないようにする責務を有する。
また、農薬の安全かつ適正な使用に関する知識と理解を深めるように努めなければならない。」とされています。
また農林水産省から、これらを遵守するためのいくつかのガイドラインが出されています。
この中でも重要な観点をいくつか解説します。
【ドローンでの空中散布に関すること】
◇事前に空中散布実施予定場所付近の施設、住民、養蜂家等に通知、および調整を行う。
◇現地の状況、天候などを鑑み、最も事故・ドリフトの発生を予防できる散布方法を選択する。
◇飛行高度は、作物上2m以下。散布時の風速は、地上 1.5mにおいて3m/s以下で行う。
【農薬散布に関すること】
◇農薬のボトル等に記載された使用方法、倍率、散布量を超えて散布しない。
◇適切な保管を行い、誤飲による事故を防ぐ。
◇作業者は長袖長ズボン、マスク、ゴーグル、ゴム手袋などを必ず着用して作業を行うこと
なお、これらの覚えるべきこと、遵守すべきルールは、範囲が広く、数も多いことから独学で身に着けるには、
多くの時間と労力を要してしまうでしょう。重要な事項を簡潔に身に着けるためには、スクールの講習を受講することが最適です。
スクールのインストラクタ―の中には、都道府県知事から認定を受けた「農薬管理指導士」の資格を所持している方もおり、
農業ドローンでの農薬散布については、インストラクターに相談をするのが最速かもしれません。
ドローン全般に関わる法律
次に、ドローン全般に視野を広げ、関わる法規制について解説いたします。
まず飛行させる物=ドローンに対する規制についてです。まず、ドローン(無人航空機)の定義として、航空法2条22号で、
「無人航空機とは、航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他政令で定める機器であつて構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦が可能なもの」と定められています。
さらに、2022年6月からは、機体総重量が200g以上のものは無人航空機に当てはまらないとしていたものを100g以上に
改めました。これにより、市販されているドローンのほとんどが、その定義によって規制の対象となりました。
規制の対象となったドローンは、車でいうナンバープレートを国土交通省に申請して発行する必要が発生し、更に、
そのナンバーを機体に掲示することが必須となりました。これを機体登録制度と言い、飛行中、機体から機体の所有者情報を発信する
リモートID機能の搭載も義務付けられました。(一部免除あり)
▼無人航空機登録ポータルサイト
次に、飛行させる場所による規制です。
最後に、飛行させる方法についての規制です。
さいごに
以上がドローンに関する法規制の概要でした。
これからの日本の農業にとって、なくてはならない農業ドローンの規制がこれ以上厳しくならないよう、
使用者自身が安心安全かつルールとマナーを守った飛行を行う必要があります。
これらの情報は日々更新されます。常に新しい情報の取得を心掛けましょう。
農業ドローン相談室では常に最新の情報をお届けいたします。