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農業ドローンで多い事故は?事故事例に学ぶ、事故予防策!

車の運転同様、農業ドローンを運用するに当たって、拭いきれないものが事故への不安です。
ドローン向けの保険も日に日に増え、事故で機体が壊れてしまっても修理費用が掛からない保険や
ドリフトを起こしてしまった場合の補償費用を負担してくれる保険などもございますが、まずは事故を起こさないことが先決です。
国土交通省に報告された事故事例などを元に、起こりがちな事故を学び、予防に努めましょう!

令和3年のドローン事故

国土交通省に報告のあった事故件数は139件、農業機の事故は45件(無人ヘリ含む)です。
農業機か撮影用の無人航空機かに関わらず、報告されていない事故の件数は多くあると予想できますが、
ここでは、国土交通省に報告のあった内容を基に事故予防について考察します。
※国土交通省の許可承認を受けて行う飛行中に発生した事故については、
国土交通省を含め、関係各所への報告が義務となっておりますのでご注意下さい。

Case1 無線機が不通の際のナビゲーターとの連携不足
ドローンでの農薬散布は、プロポ(送信機)をもったオペレーターとその対面に立つ旗を持ったナビゲーター(合図マン)との二人一組で行う
ことがガイドラインで定められております。この二人は、無線機等を使い、お互いにコミュニケーションを取りながら、圃場の端を伝えたり、
障害物への注意を行います。無線機を使用する場合、免許が不要な特定小電力トランシーバー(通称:特小)を使用する方が多く、特小は通信が途切れる場面も多くあります。この事故では、無線機が不通の状況において、ナビゲーターの障害物に対する注意喚起がナビゲーターに伝わらなかったことが要因として考えられます。
予防策としては、不通になる前に事前に障害物について伝えておく、また、無線が不通の状態でも障害物に対する注意喚起を行うジェスチャーを決めておくといったことが考えられるでしょう。農業ドローンの講習を受ける際に、スクールで講師に無線機が不通の状態での推奨される行動を確認しておくと良いかもしれません。

Case2 進行方向延長線上の障害物への対処不足かつ、ナビゲーターが機体を見ていなかった。
Case1と似た状況ではありますが、このケースでは、ナビゲーターが次の圃場で使用する薬剤を調合中で、機体を見ていなかったそうです。
飛行中にナビゲーターが機体から目を離すことは有ってはならないことです。なぜなら、ドローンの進行方向の横に位置する障害物は、オペレーターからも見えますが、進行方向延長線上は、機体がオペレーターの立つ位置から離れれば離れるほど、ナビゲーター頼りになる部分が存在するためです。予防策としては、ナビゲーターを必ず配置し、常時、安全飛行を監視し、適切なコミュニケーションを取ることと考えられます。

Case3 自動航行の設定ミス。障害物の認識不足
散布のモードに、自動航行モードがある機体は大変便利ですが、オペレーター自身が操縦しない分、障害物への危険度が増します。予防策としては、自動航行のルート設定時には、今一度障害物に衝突する危険性がないか、よく確認すること。また、自動航行時でも手動での操作介入ができる機体の場合には、プロポを離さず、常に機体を注視し、危険を感じた際には、自分の責任で危険を回避しましょう。自動航行とはいえ、事故の回避は全てオペレーターの責任です。

Case4 架線、支線、木の枝の見落とし
架線、支線、木の枝への衝突は最も多い事故と言えるでしょう。オペレーターとナビゲーターの2人で確認しあうこと。またお客様の圃場を散布する場合には、圃場の端まで漏らさず、丁寧に撒いて欲しいという要望を頂く場合もありますが、その場合にも、自分の技量を過信せず、お客様にはお断りを入れるか、ドローンを使用しない手作業での散布を行う必要があるかもしれません。防風林などの木の枝が圃場まで垂れてきてしまっている場合には、事前に枝を切っておいてもらうなど事故を予防する方法は多く存在します。また、事前に機体の特性を理解しておく必要もあります。機体によっては、タンク容量を満タンに入れた状態だと、制動距離が延びる機体や、GPSの受信感度が悪くなると意図した位置で静止せず、流れていってしまうという場合もあるかもしれません。さらに時間帯にも注意しなければなりません。夜明け前の作業時には、暗く細い支線は見えにくく、真夏の炎天下の作業では、疲労から集中力が低下し、注意力が低下します。車の運転と同じで、事故に対する事前の備えと、ヒヤリハットの発生時には、次回の発生予防策を検討したり、スクールのインストラクターに相談すると良いかもしれません。

Case5 練習不足、整備不良、事前点検不足
事故を起こさないためには、普段の練習も肝心です。スクールで所定の飛行時間の間しっかり練習をさせて貰い、アドバイスを貰うことだけでなく、その後も知識の向上や安全な飛行、散布を行う技量向上への練習も必要かもしれません。また、慣れてくると疎かにしがちな機体の事前点検と整備ですが、ひと手間を疎かにした結果、損をするのは自分自身です。ひと手間を惜しまず、入念に整備と事前点検を行いましょう。

令和2年のドローン事故

国土交通省に報告のあった事故件数は71件、農業機の事故は19件(無人ヘリ含む)です。

Case1着陸時、地面が傾斜していたため、ドローンが転んでしまった。
圃場周辺に、平らで安全に着陸できる場所が少ないということはよくあります。事前に平らで安全な離着陸ポイントを確認しておくだけでなく、バッテリー残量不足など突発的な理由で緊急着陸をしなければならない場合に、すぐに緊急着陸できる平らで安全な場所を把握しておくことも重要です。
Case2バッテリー残量がなくなり、機体が急降下し対処できなかった。
ドローンに使用されるリポバッテリーは大出力のパワーを引き出せる代わりに、使用回数を重ねると不具合が起きやすくなったり、残量が減ると突然電圧が下がったり、低温時、高温時に本来の性能を発揮できなくなる場合があるといった様な特徴があります。そうしたことに対する事故の予防策としては、バッテリーの使用には余裕を持って、限界まで使用しないことや、飛行中、残量が低下してきた際には、突然機体が不安定になる可能性を考慮する必要があるかもしれません。購入時に、購入先においてバッテリーの特性をよく聞き、予防策を聞いておく必要があるかもしれません。

令和元年のドローン事故

国土交通省に報告のあった事故件数は83件、農業機の事故は32件(無人ヘリ含む)です。
令和元年の事故もほぼすべてが人為的な操縦ミス、ナビゲーターとの連携不足での電線、支線、樹木、電話線や引き込み線などへの接触の事故でした。

農業ドローンで多い事故は?事故事例に学ぶ、事故予防策!

農薬事故について

また、ドローン操縦の事故以外にも、農薬を取り扱う際には、農薬事故にも気を付けなければなりません。
農林水産省は、HPにて、平成30年度から令和2年度におきた農薬事故についてまとめています。
▼人への被害
▼農作物、家畜(蜜蜂※を除く)及び生活環境動植物等に対する被害
※農薬が原因の可能性がある蜜蜂被害事例については、都道府県による蜜蜂被害軽減対策の検証結果とあわせて別途公表しています。
https://www.maff.go.jp/j/nouyaku/n_mitubati/honeybee.html

適切な管理、適切な散布を行うことでこの様な事故は未然に防ぐことができる反面、方法を間違えると人体や農作物への損害を生じ、賠償を請求される可能性もございます。農業ドローンの講習を受講する際には、農薬の安全な使用方法や規制について正しく学べるスクールを選ぶことが推奨されます。

事故に対する全体考察

ここまで無人ヘリおよび農業ドローンを使用している際に実際に発生した事故と農薬使用時に発生した事故の報告例を見てきました。
全体を通してみるとそれらの事故の要因は、人的なミスや怠慢が原因であることがほとんどであり、機械的、気候的なものも0ではないものの、
それらの可能性についても、事前に予防策を取ることで防ぐことが可能であると考えられます。

なお、機械的な原因での事故は数少ないものの、ドローンの普及過程にある現在では、農業ドローンに関する車検の様な制度はなく、
機体メーカーの選択は慎重に行う必要があり、購入先についても良く調べておきましょう。
また農業ドローン相談室が現在取り上げている主要4メーカーであっても、講習の受講先選びも重要です。
農業ドローンの購入時には、事前にその機体での講習を受け、機体の特徴を講師からよく訊き、頭に入れておく必要があります。
購入先、受講先の他には、整備所も重要です。1年に1回以上点検整備をお願いし、安全に飛行・散布ができることを確認のうえ、使用しましょう。
なお、これらの3つの機能を兼ね備えた販売代理店を選択することが好ましいでしょう。

ドローンメーカーが強化している安全機能について

なお、各ドローンメーカーはドローン操縦による操縦事故、農薬事故を防ぐために、機体開発において様々な機能を強化しています。
操縦者と機体の通信が途切れてしまった場合、離陸地点に戻ってくる機能(フェイルセーフ機能)やセンサーで障害物を検知する機能は安全飛行をサポートしてくれます。また、農業ドローンの多くは、散布した農薬が飛散すること(ドリフト)を防ぐ様、工夫されています。
これは、プロペラが起こす下向きの風(ダウンウォッシュ)を計算し、意図した位置に薬剤を投下できる様に散布ノズルの位置や種類を機体の大きさ、形状に合わせたものにしているためです。機体を選択する際にはこうした機能についても考慮して選ぶことが推奨されます。

さいごに

農業ドローンが急速に普及している理由の一つとして、無人ヘリよりも操縦が簡単で、操作しやすく、事故が少ない点にあります。
しかしながら、毎年人的要因での事故が生じてしまっており、その予防の一役として、農業ドローン相談室をご活用頂けると幸甚です。
なお、万が一事故が起こってしまった際に使用できる保険に加入しておくことも重要です。
農業ドローン相談室ではそういったドローン保険についてもコラムで解説予定です。
その他、コラムで取り上げて欲しいという内容があればお問い合わせフォームよりご連絡下さいませ。


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