意外と違う!メーカー別に見る農業ドローンの安全機能
農業ドローンデビューに当たって、自分が事故を起こさず、安心安全な運用ができるだろうのか?
という不安を抱える方もいらっしゃるかと思います。ドローンで事故を起こしてしまった場合、その責任は全て、操縦者自身に課せられます。
事故を起こさないためには、落ち着いて手順通り確実な操作を行うこと、不測の事態に対応する技術を身に着けておくことなど、
事故を防ぐ方法はいくつもございますが、ここでは、ドローン自身が未然に事故を防いでくれる「安全機能」について解説いたします。
起こりやすい事故
まず、農業ドローンの事故の要因として起こりやすいものとして、準備不足、誤操作、障害物への衝突などに大別できます。
その中でも最も多い、障害物への衝突の理由を詳しく見ると、
「➀GPSが切れて風に煽られたため、➁慌てて操作をしたら、進行方向を間違えたため、➂障害物に気付かなかったため」等が挙げられます。
➀GPSが切れて風にあおられたため
通常、ドローンは位置情報を受信し、正しい位置に留まろうとするため、例えば危険を感じた際には、操作を中断することでその位置にホバリングをし、危険を回避することができます。しかし、GPS(正確には、GNSS信号のことを言う。GPSは数あるGNSSの内の一つ)は、場所・時間・環境等によって受信数が変わり、その精度が変わります。特に谷間の農地で、四方のすぐ近くを障害物に囲まれた箇所ではGNSS信号を受信しづらく、正しい位置に留まろうとするホバリングの精度が落ちる可能性があります。GPSが切れてしまっても慌てずに操縦を行うことが必要です。
➁慌てて操作をしたら、進行方向を間違えたため
散布飛行中、バッテリーが少なくなって、慌てて機体を離陸地点まで戻そうと操縦した際、進行方向を誤ってしまい障害物に衝突してしまったという事例もあります。安全運転を行うためには、バッテリー残量と心に余裕をもって操縦する必要があります。
➂障害物に気付かなかったため
監視補助者が目を逸らしていて、機体が障害物に近づいている状況に気付かず、操縦者に危険を報告できなかった。という事例や、離陸場所を決める際に、電線の確認を怠り、電線に突っ込んでしまった。という事例があります。離陸前に周囲の障害物をしっかり確認すること、監視補助者と無線機等で通話しながら、障害物への危険がないか常に確認しながら飛行を行うことが重要です。
その他、準備不足として、アームの閉め忘れという事故も発生しています。農業ドローンの多くは、折り畳み式で大型の機体でも軽トラックの荷台に積めるサイズまで小さくなります。移動時に折り畳んだアームを広げたつもりで離陸したところ、しっかりとアームが閉まっておらず、モーターを始動した瞬間にプロペラが本体に衝突という事例もあります。離陸前には、機体の準備が万全か、毎回しっかりと確認する必要があります。
とはいえ、上記の事例を頭に入れ、気を付けていても起きてしまうのが、事故というものです。しかし、事故を未然に防いでくれる機能がドローンに備わっていれば、安心です。
それでは、各メーカーごとの安全機能について見ていきます。
XAG社 P30の安全機能
XAG社のP30は、完全自動航行です。航行するルートを正確に設定することで、自動で散布を行い、自動で離陸地点に戻ってきます。そのため、進行方向の操縦ミスの様な人的ミスは発生しません。また、P30では、GNSS RTKという装置を使用するので、ホバリングの精度をセンチメートル単位に抑えるため、安定した飛行を実現しています。散布を行う区域の設定は人の手で行う必要があるため、その設定を気を付けて行うことで事故の可能性減らせます。また障害物検知機能もついています。
NTT e-drone社 AC101の安全機能
AC101は、効率を重視し、本当に日本の農業に必要な機能に絞って搭載した結果、他のドローンに見られる付属機能は限られています。しかしその結果、バッテリー効率がよく、1つのバッテリーで、最大2.5haの散布が可能となっており、そのため、散布飛行中にバッテリーが少なくなり、慌てて機体を戻すという可能性が少なくなっています。そのため、余裕をもった散布計画を立てることができ事故発生の可能性を下げることが可能です。
マゼックス社 飛助MG/XL
飛助MG/XLはオプションで、障害物レーダーの搭載が可能です。
この障害物レーダーは、最も飛行中のリスクが高い前方の135°の広範囲を高感度ミリ波レーダーで障害物検知します。センチ幅の送電線や木の枝などの障害物も検知し、障害物と一定の距離まで近づくとその場でホバリングを行います。この機能があることで、安心して飛行させてことができます。
DJI社 AGRASシリーズ
DJIの農業ドローンは、4機種全てにおいて、障害物センサーを標準搭載しています。最新機種のT10とT30は、360°全方向だけでなく、機体の上と下の障害物も検知することで、全球方向の障害物を検知して、操縦者の安全航行をサポートしてくれます。
その他、T10とT30には、アームの付け根部分に開閉を検知するセンサーが付いており、アームの閉め忘れを送信機上で警告してくれます。
さいごに
ここまで各機種に搭載された安全機能について解説いたしました。
安全機能が装備されたドローンは安心して操縦ができ、作業時の疲労軽減にもなります。そのため、単純に総額費用だけで比較せず、多少値が張ったとしても、安全機能のある機体の方が得と感じることもあるかもしれません。
とはいえ、障害物センサーも細い障害物を見分けられない場合もあり、事故を防ぐのは操縦者の目であり、自分の技術で回避する必要があるということに変わりはありません。事故を起こさない意識を強く持って、安心安全の農業ドローン運用を行いましょう。