各社の農業ドローンの散布モードについて!
最新の農業ドローンの多くは、散布モードを選択でき、使用環境に最も適した
散布方法を選択することで、より効率的な液剤散布が可能となります。
本コラムでは、基本的な散布モードとメーカーごとの特徴について解説いたします。
農業ドローンの散布モードについて
多くの農業ドローンは、農薬(液剤)を水で数倍程度に希釈し、タンクに搭載。ポンプでタンクから吸い上げ、チューブを通り、
ノズルから噴射されます。機体の散布性能を比較する際には、搭載できる液剤の量を表す「タンク容量」や散布の効率を左右する「散布幅」を確認される方が多いです。
では、散布幅、タンク容量が全く同じ機種があった場合、どちらを選ぶのが良いでしょうか?
それを探るヒントとして、本コラムでは、メーカーや機種ごとに異なる「散布モード」の違いについて、解説いたします。
まず散布モードの前に、飛行の方法が手動航行か、自動航行か、に分けることができます。
農業ドローン相談室で取り上げている機種は全ての機種でどちらの飛行も可能です。
続いて、手動航行で飛行中の散布モードには主に以下の種類があります。
【通常散布モード】
機体の操縦も散布量の設定も随時、全て自分で行うモード
【散布アシストモード】
機体の進行方向がロックされ、直進方向への操縦をアシストしてくれるモード。
※各社での名称:マニュアル+モード(DJI社)、散布アシスト機能(NTT e-Drone社)、直進アシスト・連動散布モード(mazex社)
【ABモード】
A地点とB地点を設定し、そのA-Bの辺に対し、並行に散布を続ける半自動モード
なお、各社によって各モードの詳細が異なるため、次にその詳細を確認していきます。
DJI社 AGRASシリーズの散布モード
【マニュアルモード】
他のモードで対応できない箇所や操作エリアが小さい場合での使用を推奨しています。
【マニュアル+モード】
機種方向がロックされ、前後に進行している間のみ散布が行わるモードです。
ホバリング中は散布が停止するほか、飛行速度に合わせて、散布量が調整されます。
事前に散布幅、散布量、飛行高度、最高飛行速度の設定が可能です。
【ABモード】
転回点AとBを記録させることで、機体は計画された直角のジグザグルートに沿って飛行するモードです。
噴霧面積が広大かつ三角形または長方形である場合に、A-B ルート作業モードの使用を推奨しています。
【果樹モード(T30)】
アームの角度を変更し、噴霧方向を制御、樹木の株間を飛行して、左右の果樹に対して散布を行うことが可能なモードです。
【自動航行モード】
自動航行を行うには、「➀送信機で測量」、「➁機体で測量」、「➂地図で測量」の3つの測量方法のいずれかからフィールド計画を作成します。
➀は、送信機を持って圃場を一周し、四角形の圃場であれば四隅で校正点を設定してフィールド計画を作成します。
➁は、現状、T10/T30であれば可能な校正点を機体で示すことができる測量方法です。
➂は、RTK等を用いて位置情報を補正した場合に使用可能な測量方法です。
自動航行モードは、事前に設定した散布設定の通りに自動で散布を行うモードであり、
繰り返しその圃場で散布を行う場合には、大変便利な機能です。
NTT e-Drone社AC101の散布モード
【通常散布】
AC101は、作物上2mの高さからの散布で5mの幅に対し散布が可能です。
【散布アシスト機能】
DJI社のマニュアル+モード同様に、センサーで、高度と進行方向を検知し、
奥行きのある圃場や長時間の散布においても安定してムラなく散布することが可能です。
また、前後進の操作に連動して、自動的に散布がON/OFFとなることで、
散布スイッチの押し忘れによる散布ムラを防止するほか、飛行速度に応じて散布量を自動的に調節。
低速で飛行させ慎重に散布する際の撒きすぎを防止します。
スイッチ一つでこのモードに切り替えることが可能です。
【AB ポイント機能】
こちらのモードも送信機のスイッチ一つでABモードへの切り替えが可能です。長方形の圃場で活躍している機能です。
【自動航行機能】
AC101のルート設定は送信機のみで完了するため、圃場の周辺を歩いたり、RTK基地局の設置や設定も不要です
※AC101はGNSS(GPS)のみで自動航行を行います。そのため、ルート設定の位置が数mずれる可能性がありますが、
送信機で簡単に位置補正を行うことができます。
Mazex社 飛助mini・飛助DX
【通常散布】
飛助シリーズは2機種とも4mの幅で散布が可能です。
【直進アシスト・連動散布モード】
GPSを使用して飛行経路がズレないように自動で補正され、
速度は15kmで固定、散布装置も緑線だけを散布するように連動散布します。
ホバリング時や横移動時は散布装置が自動停止するので毎回操作する必要はありません。 スイッチひとつで4m自動横移動でき、誰が操作しても簡単に同じ作業品質を保つことが可能です。
【自動飛行モード】
前後横移動、散布装置のON・OFFも全て自動制御します。
前後移動だけ散布装置がON、ホバリングと横移動は散布装置がOFFになり薬剤を均一に散布します。
自動飛行中でもスティック1本で地点の延長や短縮も可能です。
また薬剤補充して再開するときも中断ポイントから自動復帰します。
なお、飛助シリーズには、ベーシック、アドバンス、プロなどのグレードが存在します。
自動航行モードを使用する場合は、購入時のグレードを選択する必要があります。
XAG社 P40・V40の散布モード
【往復モード】
水稲や平野部での使用に適した自動航行のモードです。
【フリーモード】
果樹や棚田などの使用に適した自動航行のモードです。
【マニュアルモード】
片手で操作可能な送信機を用いて行う手動操縦のモードです。
XAG社は、他社と違い、自動航行を基本的なモードとしているほか、
アトマイザーと呼ばれる特殊な散布ノズルによって、散布する液滴サイズを変更することができます。
さいごに
今回は液剤の散布モードについて解説いたしましたが、今後、粒剤散布装置についても解説を予定しています。
これまで液剤の散布が多かった農業ドローンの活用ですが、農薬メーカーによるドローン向け粒剤の開発や機体の大型化により、
搭載可能な肥料の幅が広がったこと、さらに、水稲種子のコーティング技術の向上で、ドローン直播の需要も高まっています。
農業ドローンは液剤散布だけではないという点についても今後解説していきます。 ・・・・・・・